OrcaSlicerの使い方|導入とおすすめの初期設定を解説
ダウンロードページを探すと、OrcaSlicerという名前のサイトがいくつも出てきます。公式サイトは1つだけで、ハイフンを挟んだ名前や末尾の違うアドレスは公式を装う偽サイトだと、開発元がGitHub上で警告しています。
入手先さえ間違えなければ、あとはプリンター・フィラメント・プロセスという3つのプリセットを実機に合わせるだけで、最初の1個を印刷するところまで進めます。
本記事では、OrcaSlicerの初期設定とスライスの手順、設定を取り違えたときに起きる失敗の直し方、PLA・PETG・TPUで変える設定を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
OrcaSlicerの入手先と、最初に登録する3つのプリセット
OrcaSlicerはAGPL-3.0で公開されているオープンソースのスライサーソフトで、公式サイトから無償でダウンロードできます。
偽サイトの警告は開発元のリポジトリに掲載されているので、検索結果の上位に出てきたページでも、名前が少しでも違うなら入手先として使わないでください。
配布ファイルは開発元のリリースページからも取得できます。
起動すると、最初にプリンターの登録を求められます。
対応機種にはBambu Lab・Prusa・Voron・Crealityなどが含まれ、ここで選んだ機種が造形サイズとノズル径、ベッド温度の上限を決めます。
Bambu Lab A1 miniなら造形サイズは180×180×180mm、ベッドは最高80℃、付属ノズルは0.4mmなので、登録直後にこの3つが実機と一致しているかを確かめてください。
残る2つのうちフィラメントプリセットは、使う銘柄と素材の指定です。
プロセスプリセットは層厚や速度のまとまりで、0.2mm前後の標準設定から始めると挙動を把握しやすくなります。
3つとも後から切り替えられますが、プリンターだけは最初に正しく入れておかないと、以降の数値がすべて別の機械向けの前提になります。
モデル読み込みからGコード出力までの手順
スライスするモデルが手元にないなら、配布サイトから落とすのが近道です。
安全な探し方は3Dプリンターの無料データサイトまとめで解説しています。
寸法を測って自分で作る場合の進め方は3Dプリンターのデータの作り方で解説しています。
- モデルを読み込む:STLと3MFに対応します。3MFは配置や設定ごと保存される形式なので、配布データに設定が含まれていればそのまま流用できます
- 向きを決める:接地面が広くなる向きに回すと1層目が安定し、サポート材も減ります
- サポートとブリムを決める:大きく張り出した部分にはサポート、接地面積の小さい細長い部品にはブリムを足します
- スライスしてプレビューを開く:層ごとのノズル経路が表示されるので、1層目の広がり、継ぎ目の位置、サポートの接触箇所を出力前に見ます
- Gコードを書き出す:SDカードかネットワーク送信で実機に渡します
プレビューを飛ばさないでください。
サポートが造形物の見せたい面に食い込んでいる、ブリムが隣の部品と重なっているといった失敗は、画面上で数秒あれば気づけます。
印刷時間とフィラメント使用量もここで表示されるので、長時間の印刷になるなら層厚やインフィルを見直す判断もできます。
OrcaSlicerの設定を取り違えると起きること
いちばん影響が大きいのはノズル径です。A1 miniやA1は0.2mm・0.6mm・0.8mmへ交換できますが、実機を0.6mmに替えてもプリンター設定が0.4mmのままだと、吐出量の計算が実機とずれたまま印刷が進みます。
ビルドプレート(造形物を貼り付ける板)の指定も同じです。
A1 miniに付属するのはテクスチャーPEIとスムースPEIの2種類、A1には高温プレートと常温プレートがあり、選ぶ板によって想定されるベッド温度が変わります。
実物と違う板を指定すると、1層目の温度が高すぎたり低すぎたりします。
機種そのものの取り違えは、気づきにくいぶん厄介です。
造形サイズを超えたモデルでもGコードの書き出し自体はできてしまい、実機では途中でヘッドが端に当たります。
フィラメントプリセットも、PETGをPLAの設定のまま出すとノズル温度が足りず、吐出が安定しません。
印刷を始める前に、プリンター・プレート・フィラメントの3点が実物と揃っているかだけ見る習慣をつけてください。
OrcaSlicerでつまずきやすい失敗と直し方
1層目が貼り付かない・途中で剥がれる
最初に疑うのはプレート表面の油分です。
指で触れた跡が残っていると定着が落ちるので、中性洗剤で洗って乾かしてください。
次にプレート指定が実物と合っているかを見て、細長い部品なら数ミリのブリムを追加します。
Zオフセットをいじるのはこの3つを潰してからにすると、調整がずれても戻せます。
表面に隙間や小さな穴が出る
吐出量が足りないときに出る症状で、OrcaSlicerに入っているフローレートのキャリブレーションを回すと数値を詰められます。
合わせても改善しないなら、フィラメントの吸湿を疑ってください。
SUNLU FilaDryer S2は70℃まで設定でき、PLA・PETG・TPUにも対応しますが、乾燥温度と時間は素材とメーカーで違うので、巻いているフィラメントのメーカー推奨値を確認してから設定します。
読み込んだ時点でモデルが崩れている
メッシュに穴や裏返った面があると、スライス結果に欠けや余計な壁が出ます。
モデリング側で閉じたほうが確実なので、修正の手順はBlenderで3Dプリント用データを作る手順で解説しています。
継ぎ目が1本の縦線になって目立つ場合は、シーム位置を後方や最短経路に変えると、見せたくない面へ寄せられます。
PLA・PETG・TPUで変える設定の違い
PLAは冷却ファンを最大にしたまま速度を上げやすい印刷素材で、標準プロファイルから大きく動かす場面はあまりありません。
PETGは糸引きが出やすいので、冷却を下げてリトラクション(吸い戻し)量を調整します。
PEI面に強く貼り付くため、剥がすときにプレートを傷めないよう、テクスチャー面を使うかスティックのりで離型層を作る方法もあります。
TPUのような柔らかいフィラメントは、速度を落としてリトラクションを最小にするのが基本です。
ここで見落としやすいのがAMS lite(4巻を自動で切り替える供給ユニット)で、公式の対応表ではTPEと汎用TPUが非対応とされています。
A1 miniのプリンター本体側はTPUを推奨素材に含めているので、ユニットを通さず直接送る運用になります。
ABSとASAは、プロファイルを選べるかどうかとは別の話になります。
A1シリーズはABS・ASA・PC・PAが公式に「推奨ではありません」とされており、庫内温度を保てないオープンフレームが理由です。
これらを使うなら、対応素材にABS・ASAが入っている密閉型のP1SやP2Sが前提になります。
OrcaSlicerのキャリブレーションを回すタイミングと、Curaとの使い分け
キャリブレーションは銘柄を変えたときに回す
OrcaSlicerには温度タワーやフローレートなど、試し刷りで数値を詰める機能がまとまっています。
印刷のたびに回す必要はなく、新しい銘柄や色を開けたとき、ノズルを交換したとき、吐出の症状が出たときの3つに絞れば十分です。
同じメーカーの同じ素材でも、色が変われば適温が動くことがあるので、よく使う銘柄のぶんだけプリセットとして保存しておくと次から流用できます。
Curaやメーカー純正スライサーとの使い分け
UltiMaker Curaも無償のオープンソースで、推奨プロファイルから入って400を超える設定まで触れるうえ、STEPやIGESをそのまま読み込めます。
初期設定の進め方はCuraの使い方で解説しています。
ELEGOO Centauri CarbonのようにElegooSlicerを推奨しつつOrcaSlicerとCuraにも対応する機種もあるため、純正で基本設定を出し、追い込みたい部分だけOrcaSlicerで調整する使い方もできます。
配布データにスライス設定が付いてくる場合は、Printablesの使い方で解説しているとおり、ライセンス表示とあわせて元の設定も確認してください。
よくある質問
OrcaSlicerは無料で使えますか
AGPL-3.0のオープンソースとして公開されており、公式サイトから無償でダウンロードできます。ただし公式を装う偽サイトが警告されているので、ダウンロード前にアドレスを見比べてください。
A1 miniでABSのプロファイルを選んでもいいですか
スライサー側で選べても、A1 miniとA1はABS・ASA・PC・PAが公式に推奨ではありません。これらを使う予定があるなら、対応素材にABS・ASAが含まれる密閉型の機種を選ぶことになります。
ノズルを0.6mmに替えたら、どこを直せばいいですか
プリンター設定のノズル径を0.6mmへ変更し、プロセス側の層厚とライン幅も合わせて見直します。径だけ変えて層厚を細ノズル向けのままにすると、吐出量の計算が実機とずれます。
キャリブレーションは印刷のたびに必要ですか
毎回は必要ありません。新しい銘柄や色のフィラメントを開けたとき、ノズルを交換したとき、吐出不足の症状が出たときに回せば足ります。
まとめ
OrcaSlicerでつまずく原因の多くは、操作そのものではなくプリンター・プレート・フィラメントの指定が実物とずれていることです。
入手先を公式サイトに限ったうえで、最初に3つのプリセットを実機に合わせ、スライス後はプレビューで1層目と継ぎ目を見る。
この流れを守れば、印刷が始まってから気づく失敗はかなり減らせます。
印刷素材ごとの冷却と速度、A1シリーズの推奨外素材だけは、プロファイルの有無と切り離して覚えておいてください。
ぜひ本記事の手順と失敗別の直し方を参考に、手元の機種に合わせたプリセットを作るところから始めてください。



