Blenderで3Dプリント用データを作る手順と設定を解説
Blenderで作った立方体をそのまま書き出すと、スライサーの画面に1000mm角の巨大な箱が現れます。
Blenderの初期単位がメートルで、スライサー側はミリメートルで数字を読むためです。
3Dプリント用に整えるときは、単位・メッシュの閉じ方・壁の厚さという3つさえ押さえれば、造形が崩れる原因のほとんどは書き出しより前の段階で潰せます。
本記事では、Blenderから書き出すまでの手順、形が崩れたときの直し方、PLA・PETG・TPUで変える設計の余裕を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
Blenderから3Dプリントまでの手順は3ステップ
造形用データの作成は、形を作り終えたあとが本番です。見た目が完成していても、プリンターは断面を切る都合で「中身が詰まった閉じた立体かどうか」しか見ていません。
シーンの単位をミリメートルに変える
最初にやるのは、シーンプロパティの単位設定で長さをミリメートルに切り替えることです。
Blenderは1マスを1メートルとして扱うので、そのまま進めると実寸の感覚がつかめません。
ミリ表示にしておけば、幅40mmのクリップを作りたいときに数値をそのまま入力でき、Bambu Lab A1 miniの造形範囲180×180×180mmやA1・P1Sの256×256×256mmに収まるかどうかも、作りながら判断できます。
メッシュを閉じた立体にする
重なった頂点を結合し、穴の開いた面をふさぎ、面の裏表を外向きにそろえます。
Blenderに同梱されているアドオン「3D-Print Toolbox」を有効にすると、非多様体(ひとつながりの立体として成立しない箇所)や面積ゼロの面をまとめて検出でき、問題のある部分を選択状態にしてくれます。
平面1枚だけで作った板や、厚みのない曲面は、ソリッド化モディファイアーで厚みを与えてから進めてください。
STLで書き出してスライサーへ渡す
書き出し形式はSTLが無難です。
色やマテリアルの情報は落ちますが、UltiMaker CuraでもOrcaSlicerでも素直に読み込めます。
書き出す前にオブジェクトの適用(スケールと回転の反映)を済ませておくと、スライサー側で見たサイズとBlenderで見ていた寸法がずれません。
Blenderの基本操作そのものに不安があるうちは、Blenderの本のおすすめで挫折しにくい学習順を解説しています。
単位とスケールを間違えたときに起きること
単位の取り違えは、スライサーに読み込んだ瞬間に分かります。
造形範囲の枠を大きくはみ出した半透明の塊が表示されるので、気づかず印刷してしまうことはまずありません。
厄介なのは逆のほうで、1000分の1になって豆粒のように表示されたとき、画面を拡大すれば一応形が見えるため、そのまま印刷を始めてしまう場合があります。
縮んだデータを印刷すると、壁がノズル径より細くなって層がほとんど出力されず、プレートの上に糸くずのようなものが残ります。
スケールをスライサー側で1000倍に戻す対処もできますが、その場合は面取りやフィレットの丸みも同じ倍率で拡大されるため、意図した仕上がりとは別物になります。
Blenderに戻ってスケールを修正し、書き出しからやり直すほうが結果は正確です。
Blenderのモデルでよくある失敗と直し方
壁が薄すぎて消える
A1 mini・A1・P1Sはいずれも0.4mmノズルが付属しています。
ノズルから出る線は約0.4mm幅なので、1mm未満の壁は1〜2本の線で表現され、0.4mmを切ると線が1本も置けずに消えます。
文字の凸やリブ(補強の細い板)を作るときは、幅を0.8mm以上、できれば1.2mm程度まで確保してください。
Blenderの画面上では問題なく見えていても、スライサーのプレビューで層を1枚ずつ送ると、消えている箇所がその場で分かります。
面の裏表が混ざっている
押し出しやミラーを繰り返すと、一部の面だけ法線が内側を向くことがあります。
オーバーレイのフェイスの向き表示を有効にすると、裏返った面が赤で表示されるので、編集モードで全選択してから法線の再計算をかけます。
裏返りを放置したまま書き出すと、スライサーが内外を取り違え、断面のハッチングが抜けてスカスカの造形になります。
パーツが浮いている・交差している
複数のオブジェクトを組み合わせた形は、接触しているように見えて0.01mmだけ離れていることがあります。
離れていれば別パーツとして扱われ、空中から始まる部分はサポート材だらけになります。
意図的に食い込ませてからブーリアンで合体し、ひとつのメッシュにまとめてから書き出してください。
逆に、正確な寸法どうしをぴたりと合わせたい機械部品なら、3DCADの選び方で解説しているような寸法駆動のソフトのほうが作業が速く済みます。
3Dプリントに必要なソフトは2本、代用が利くもの
必要なのはモデリング用のBlenderと、断面データに変換するスライサーソフトの2本だけです。
スライサーソフトは、プリンターのメーカーが配布しているものを使えば設定済みのプロファイルがそのまま使えます。
メーカー純正にこだわらないなら、無償でダウンロードできるUltiMaker Curaは400を超える設定項目を持ち、STEPやIGESの読み込みにも対応しています。
基本的な設定の流れはCuraの使い方で解説しています。
OrcaSlicerはAGPL-3.0のオープンソースで、Bambu LabやPrusa、Creality系のプリンターに幅広く対応し、温度タワーなどのキャリブレーション機能も備えています。
ただし公式を装う偽サイトが存在すると開発元がリポジトリ上で警告しているので、検索結果の広告枠からではなく、公式のリポジトリからたどって入手してください。
メッシュ修復の専用ソフトは、3D-Print Toolboxで直せる範囲なら無くても困りません。
メッシュの点検は、形が変わるたびと書き出し前の2回
点検のタイミングは、ブーリアンやミラーなど形そのものを変える操作を終えた直後と、書き出す直前です。最後にまとめて直そうとすると、どの操作で破綻したのかが分からなくなり、原因の切り分けに時間がかかります。
造形時間の長い大物ほど、この2回を守る価値があります。
印刷が始まってから形の破綻に気づくと、それまでの時間とフィラメントがそのまま無駄になります。
なお長時間の印刷になる場合でも、完全な留守中や就寝中に動かしっぱなしにするのは避けて、様子を見られる時間帯に回してください。
PLA・PETG・TPUで変えるモデル側の余裕
同じデータでも、印刷素材が変わると出来上がりの寸法と質感が変わります。A1シリーズの公式推奨はPLA・PETG・TPU・PVAで、ABSやASAは推奨されていないため、家庭向けではこの3種が中心になります。
| 素材 | モデリング側で変えること |
|---|---|
| PLA | 寸法が出やすいので、はめ合いのすき間は小さめでも入ります。耐熱が低いため、熱がこもる場所で使う部品には向きません |
| PETG | 粘りがある反面、細い突起や鋭い角は糸引きで乱れやすいので、形を単純にまとめます。穴はPLAよりわずかに縮む前提で設計します |
| TPU | 柔らかく変形するので、薄い壁や細い柱は潰れます。壁は厚めに取り、サポートが必要な形状そのものを避けます |
TPUにはもう一つ注意点があります。
AMS liteは対応素材にTPUが含まれておらず、AMS 2 Proも汎用のTPUは非対応です。
多色のデータをBlenderで組んでも、柔らかい素材の部分だけは単色で別に印刷する必要が出てきます。
よくある質問
Blenderのスカルプトで作った形も3Dプリントできますか
できます。
ただしスカルプトのメッシュは面数が数百万に達することがあり、そのまま書き出すとSTLが巨大になってスライサーの動作が重くなります。
リメッシュやデシメートで面数を落としてから書き出してください。
細部が潰れない範囲まで減らすのが目安です。
モディファイアーは適用してから書き出す必要がありますか
STL書き出しでは表示されている結果が反映されるため、適用しなくても形は出ます。
ただしソリッド化やブーリアンが重なっていると、内部に見えない面が残って非多様体になることがあります。
適用して実体化してから3D-Print Toolboxで点検するほうが、破綻を見つけやすくなります。
Blenderで作ったデータに色を付けて多色印刷できますか
STLには色の情報が入りません。
多色で出すなら、色ごとにオブジェクトを分けて書き出し、スライサー側でそれぞれにフィラメントを割り当てます。
AMS liteやAMS 2 Proを使う場合も、データ側の分割は同じ考え方です。
配布されているデータをBlenderで改造してもいいですか
モデルごとに作者が設定したライセンス次第です。
派生を禁止する条件や、同じライセンスを引き継ぐ条件が付いているものがあります。
ダウンロードする前にモデルページの表示を確認してください。
探し方と注意点は無料データサイトのまとめで解説しています。
まとめ
Blenderから3Dプリントへ渡すときにつまずくのは、単位の取り違え、閉じていないメッシュ、ノズル径を下回る薄い壁の3つに集中します。
どれもスライサーに読み込む前に気づけるもので、ミリ表示への切り替えと3D-Print Toolboxでの点検を習慣にすれば、印刷してから作り直す回数は確実に減ります。
素材をPETGやTPUに変えるときは、データ側の余裕も合わせて見直してください。
ぜひ本記事の3ステップと素材別の目安を参考に、手元のモデルを造形できる形に整えてみてください。

