スカルプトモデリング入門|無料で始めるフィギュア造形
スカルプトモデリングは、粘土をこねるように形を作る方式です。
寸法を入力して箱や円柱を組み合わせるCADとは発想がまったく違い、ブラシで盛る・削る・なめらかにするという3つの操作がほぼすべてになります。
最初につまずくのはツールの使い方ではなく、ポリゴンの密度が足りないまま細部を彫ろうとすることです。
密度が低い面をいくら押しても、角が立つだけで曲面になりません。
本記事では、スカルプトの基本手順・密度不足で起きる失敗・3Dプリント用に出力するときの修正点を解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
スカルプトモデリングの基本手順は「大→中→小」の3段階
作業の順番はひとつしかありません。
大きな塊を決めてから、中くらいの起伏を作り、最後に表面の細部を彫ります。
この順を飛ばして最初から目や指を作り始めると、あとで全体のバランスを直したくなったときに、彫った細部ごと歪みます。
球から始めて全体のシルエットを決める
Blenderなら球、Tinkercadのような寸法ベースのツールとは違って、スカルプトは最初から形を決め込みません。
球や立方体をひとつ置き、グラブ系のブラシで大きく引っ張って、キャラクターなら頭と胴の比率、小物なら全体の輪郭だけを作ります。
この段階ではポリゴンを増やしません。
面が粗いほうが大きな変形をかけやすく、シルエットの狂いにも気づきやすいからです。
密度を上げてから中くらいの起伏を作る
シルエットが決まったら、ここで初めてポリゴン密度を上げます。
Blenderのダイナミックトポロジーやリメッシュ機能を使うと、変形した部分に合わせて面が自動的に割り直されます。
密度を上げたら、筋肉の盛り上がりや服のしわといった中くらいの起伏を彫ります。
盛るブラシと削るブラシを交互に使い、ならすブラシで境目をなじませるのが基本の流れです。
細部は最後に、しかも彫りすぎない
表面の模様や細かい溝は最終段階です。
3Dプリントが前提なら、ここで彫り込める深さには限界があります。
0.4mmノズルで出力する場合、0.4mmより細い溝は壁として再現されず、潰れるか消えます。
画面上で見えている細部が、そのまま実物になるとは限りません。
密度が足りないまま彫ると何が起きるか
低いポリゴン密度のまま細部を彫ろうとすると、意図した曲線のかわりに多角形の角が出ます。
ブラシは既にある頂点を動かす道具なので、動かす頂点がなければ形は作れません。
球の初期状態で目のくぼみを作ろうとしても、面がカクカクに折れるだけで終わります。
反対に、最初から密度を極端に上げるのも失敗します。
頂点数が数百万に達すると画面の動きが重くなり、大きな変形をかけたときにも形が思うように動きません。
塊を作る段階で密度を上げてしまうと、あとからシルエットを直すのがほぼ不可能になります。
密度は、その段階で彫りたい細かさに見合うぶんだけ上げるものです。
もうひとつ、3Dプリント側で跳ね返ってくる問題があります。
彫り込んだ結果として面が自分自身を貫通する状態(自己交差)になると、スライサーソフトが内と外を判断できず、造形データの一部が欠けたり、意図しない空洞ができたりします。
画面上では見た目が破綻していないので気づきにくい失敗です。
スカルプトでよくある失敗と直し方
左右非対称になってしまう
顔や動物を作っていて、途中から左右がずれていく失敗です。
対策は、作業の最初にミラー(対称)モードをオンにすることです。
片側を彫ると反対側に同じ形が自動で作られます。
ただし対称モードは原点を基準に動くので、球を移動させてから対称をオンにすると、本来と違う位置で鏡写しになります。
移動させる前に設定してください。
薄すぎて出力できない部分ができる
剣の刃や、翼の先端、髪の毛の一本一本といった部分は、画面上では成立していても実物では薄すぎて印刷できません。
FDM方式では、ノズル径の2倍前後を最小の壁厚の目安にしてください。
0.4mmノズルなら0.8mm以上が無難です。
削るブラシで薄くしたあとは、盛るブラシで厚みを戻します。
ならしすぎて形がぼやける
スムーズブラシは気持ちよく使えるので、かけすぎて全体がのっぺりすることがあります。
元に戻す操作で戻すか、戻しきれない場合は彫り直しになります。ならすのは境目だけにして、面全体に広くかけないでください。
宙に浮いたパーツができている
別オブジェクトとして追加したパーツが、本体の表面とわずかに離れたままになっている失敗です。
スライサーソフトは浮いた部品をサポート付きで印刷しようとするか、警告を出さずに分離したまま出力します。
結合する操作(ブーリアンの和やリメッシュ)で、ひとつの閉じた形にまとめてから書き出してください。
スカルプトに必要な道具と無料で始められるソフト
マウスだけでも始められますが、筆圧に対応したペンタブレットがあると、ブラシの強さを手で加減できるようになります。
マウスでは強さが一定なので、設定値を何度も変えながら彫ることになります。
必須ではありませんが、作業量が多いほど差が開く道具です。
スライサーソフトは、Blenderが代表格です。
無償で使えてスカルプト機能が標準で入っており、3Dプリント向けの書き出しまで同じソフト内で完結します。
寸法を正確に決めたいパーツが混ざるなら、AutodeskのFusion 360の個人利用条件で解説している無償プランを併用する手もあります。
個人の非商用で年間収入1,000米ドル未満という条件があるので、確認してから使ってください。
Tinkercadはブラウザで動く無償ツールですが、こちらは図形を組み合わせる方式でスカルプト向きではありません。
有機的な形を作りたいならBlender、箱物ならTinkercadという使い分けになります。
Blenderで作ったデータを印刷できる形にする手順は、Blenderで3Dプリント用データを作る手順で解説しています。
スカルプトしたデータを印刷用に出力するときの確認点
スカルプトで作った形は、面の数が数十万から数百万に膨らみます。
そのまま書き出すとファイルが巨大になり、スライサーソフトの読み込みが重くなります。
リトポロジーやデシメート(面を間引く機能)で、見た目が崩れない範囲まで減らしてから書き出してください。
目安として、手のひらサイズの造形物なら数万面もあれば表面の階調は十分に残ります。
書き出す形式は、スカルプトのように単色の造形ならSTLで足ります。
色や複数素材の情報を持たせたい場合は3MFを選びます。
両者の違いはSTLファイルの開き方と変換と3MFとSTLの違いでそれぞれ解説しています。
書き出し前に、閉じた立体になっているかを確かめてください。
穴が開いた面や、裏返った法線(面の向き)が混ざっていると、スライサーソフトが内部と外部を取り違えます。
Blenderには3D Print Toolboxという標準アドオンがあり、非多様体の辺や薄すぎる部分を一覧で検出できます。
素材ごとに変わる、スカルプト造形の彫り込み深さ
同じデータでも、印刷に使うフィラメントによって再現される細かさが変わります。
PLAは固まるのが速く、形状の保持に優れた素材なので、彫り込んだ細部がいちばん出やすい選択です。
表面のつや消し仕上げを狙うならマットタイプのPLAを選ぶと、積層の線が目立ちにくくなります。
PETGは糸引きが出やすく、細かい凹凸の間に細い樹脂の糸が渡ることがあります。
スカルプトで彫った細かい溝が糸で埋まると、せっかくの造形が潰れて見えます。
強度が必要なパーツでなければ、細部の多い造形物にはPLAのほうが向いています。
TPUは柔らかい素材で、細部の再現はいちばん苦手です。
押し出した樹脂が自重でわずかに垂れるため、鋭いエッジは丸まります。
フィギュアのような造形には向かず、やわらかさが目的のパーツ向けと考えてください。
なお、Bambu LabのA1シリーズではABS・ASA・PC・PAが公式に推奨されていないので、スカルプトデータを高耐熱素材で出したい場合は密閉型の機種が前提になります。
よくある質問
スカルプトとCADは、どちらを先に覚えるべきですか
作りたいものによります。
キャラクター・動物・装飾品のような有機的な形ならスカルプト、ケースや治具のように寸法が決まっているものならCADです。
片方だけで完結する作品も多いので、作りたいものから入ってください。
AI生成の3Dモデルをスカルプトで直すことはできますか
できます。
Meshy AIやTripo AIのようなサービスで出力したモデルは面の流れが整っていないことが多く、Blenderでリメッシュしてからスカルプトで修正するという使い方があります。
ただしFreeプランで生成したデータは、Meshy AIならCC BY 4.0でクレジット表記が必要、Tripo AIならパブリックモデル扱いで非商用のみといった制約があるので、公開前にライセンスを確認してください。
彫った模様が印刷すると消えてしまいます
溝の幅がノズル径を下回っている可能性が高いです。
0.4mmノズルなら、幅0.4mm未満の溝は壁として出力されません。
溝を太く彫り直すか、0.2mmノズルに交換してください。
Bambu Labの各機種は0.2mm・0.6mm・0.8mmのノズルが選べます。
スカルプトしたモデルを配布するときの注意点はありますか
公開先ごとにライセンスの仕組みが違います。
MakerWorldはモデルごとに作者がライセンスを設定する方式で、CC0を選ぶ場合は実物を印刷した写真の掲載が必要というルールがあります。
配布サイトの選び方は無料3Dデータサイトの安全な探し方で解説しています。
まとめ
スカルプトモデリングで最初に身につけたいのは、ブラシの種類ではなく作業の順番です。
球から大きな塊を作り、密度を上げてから中くらいの起伏を彫り、最後に細部へ進みます。
この順を守るだけで、角が立つ失敗もシルエットが崩れる失敗も減らせます。
3Dプリントまで見据えるなら、画面で見える細かさと実物で出る細かさが違うことを前提にしてください。
0.4mmノズルで0.4mm未満の溝は出ず、薄い部分はノズル径の2倍を下回ると形になりません。
ぜひ本記事の3段階の手順と、壁厚・溝幅の目安を参考に、まずは球ひとつから彫り始めてみてください。



