3Dプリント品の表面処理のやり方|積層痕を消す方法
プレートから外した造形物を光にかざすと、細い横じまが並んで見えます。
この積層痕を平らにする表面処理は、サポート痕をニッパーで落としてから、紙やすりを400番・600番・1000番と段階的に上げるのが基本です。
いきなり1000番で磨いても層の谷までは届かず、山の頭が光るだけで下地のでこぼこは残ります。
Bambu Lab A1 miniのように0.4mmノズルが標準の機種では、より細い0.2mmノズルに替えても段差がゼロになるわけではないので、削る工程そのものは避けられません。
本記事では、サポート痕の落とし方、やすりの番手の上げ方、PLA・PETG・TPUで変わる手順まで解説します。

おうち3Dプリンター編集部
おうち3Dプリンター編集部です。家庭用3Dプリンターを「家電のように迷わず選べる」状態にすることを目指して、機種の比較、フィラメントの選び方と保管、設置環境づくり、印刷トラブルの対処を解説しています。
※本記事はAIの補助を得て作成し編集部が校正しています。
3Dプリンターの表面処理は、サポート痕を落としてから番手を上げる
削り始める前に、サポート材と突起を取り切る
プレートから外すのは造形物が冷えてからにしてください。
温かいうちに力まかせにはがすと、薄い部分がそったり割れたりします。
サポート材はニッパーで根元から切り、残った小さな突起はデザインナイフの刃を寝かせて削ぎ落とします。
突起を残したまま紙やすりに移ると、出っ張りだけが先に削れて周囲がへこみ、平面が波打ってしまいます。
糸引き(印刷中に細い樹脂が糸状に残る現象)も、やすりで巻き込む前にナイフで取ってください。
紙やすりは400番から1000番へ、当てる方向を変えながら
積層痕は層の山と谷でできているので、最初は谷の深さぶんを削り落とせる粗さが要ります。
400番前後から始めて600番、1000番と上げ、番手を変えるたびに当てる方向を45度ほどずらすと、前の番手で付いた傷が残っているかどうかが目で分かります。
平面は紙やすりを木片やプラ板に巻いた当て木で、曲面はスポンジやすりで追うと形が崩れません。
番手を1段上げるごとに、削りカスを水で流すか布で拭き取ります。
粉が残ったままだと新しい紙やすりがすぐ目詰まりして、磨いているつもりで表面をなでているだけになります。
番手を飛ばした削りは、かえって作業時間を増やす
1000番からいきなり始めると、層の山の頭だけがつやを持ち、谷はそのまま残ります。見た目は整って感じられるのに、サーフェイサー(塗装前に吹く下地用の塗料)を乗せた瞬間に横じまが浮き上がり、400番からやり直すことになります。
反対に、粗い番手を強く押し付けて削りすぎると寸法が変わります。はめ合いのある部品は穴が広がってガタつき、ネジを通す穴では締まりが甘くなります。
角をなめてしまった造形物は、塗装しても輪郭のシャープさが戻りません。
削る量は、層の谷が消えた時点で止めるのが基準です。
斜めから光を当てて横じまが見えなくなったら、その面は次の番手へ進んでかまいません。
表面処理でよくある失敗と、その場での直し方
平面のはずの面が丸くなった
指で紙やすりを押さえて削ると、指の腹の形がそのまま面に出ます。
平らな面は必ず当て木を使い、縁まで同じ力で動かしてください。
すでに丸くなった面は、当て木を使って周囲ごと削り直すと平面が戻りますが、そのぶん厚みは減ります。
寸法が決まっている部品では、削り直すより再印刷のほうが早く済みます。
削った面が白く毛羽立つ
PETGのように粘りのある樹脂で起きやすい現象です。
乾いた状態で粗い番手を当てると、削れずにむしれて繊維状のささくれが出ます。
紙やすりを水で濡らして使う水研ぎに切り替え、力を抜いて往復させてください。
作業後はよく乾かしてから塗装へ進みます。
摩擦熱で表面がてかって溶けた
PLAは熱で軟らかくなるため、電動リューターを高速で当て続けると削るより先に溶け、樹脂が伸びて面にこびりつきます。
回転を落とし、一か所に留めず動かし続けるのが前提です。
溶けてしまった部分は、固まってからナイフで削ぎ、400番からやり直してください。
表面処理に要る道具と、家にあるもので代用できる範囲
最初に揃えるのは5点で足ります。消耗するのは紙やすりだけなので、粗さ違いを数枚ずつ持っておくと作業が止まりません。
| 道具 | 役割 | 代用 |
|---|---|---|
| ニッパー | サポート材の切除 | 代用しない(手で折ると層が裂けます) |
| デザインナイフ | 突起と糸引きの削ぎ取り | カッターの新しい刃 |
| 紙やすり 400/600/1000番 | 積層痕の除去と仕上げ | 3種あれば足ります |
| 当て木 | 平面を平面のまま削る | 木片・硬いプラ板・角の立った消しゴム |
| 防じんマスク | 削り粉を吸い込む量を減らす | 代用しない |
曲面が多い造形物では、スポンジやすりがあると角を立てずにならせます。
削りカスは細かく舞うので、換気できる場所で作業してください。
サポート除去から仕上げまでに使う工具は塗装や組み立てとも共通するものが多く、何から買うかは3Dプリンターの必須工具で解説しています。
PLA・PETG・TPUで変わる削り方
同じ紙やすりを当てても、印刷素材によって削れ方がまったく違います。A1 miniやA1が推奨しているのはPLA・PETG・TPU・PVAの4つで、このうち手で磨く対象になるのは前の3つです。
| 素材 | 削ったときの挙動 | 進め方 |
|---|---|---|
| PLA | 硬く、粉になって削れる。摩擦熱に弱い | 乾いたまま400番から。電動工具は低速で |
| PETG | 粘りがあり、乾研ぎだと毛羽立つ | 水研ぎ中心。ナイフは刃を寝かせる |
| TPU | 軟らかく面が逃げるので、やすりが掛からない | 削るより層の高さと造形の向きで詰める |
TPUだけは手順が別物になります。
柔軟な樹脂は紙やすりを当てても面が沈んで逃げるため、磨いて平滑にするという発想が通用しません。
見える面に層の段差を出したくないなら、印刷前に向きを変えて段差の目立つ面を内側へ回すほうが確実に仕上がります。
表面処理をどこで止めるか、造形する前に決めておく
塗装まで進むなら、600番で止めてサーフェイサーを吹き、乾いてから1000番で均すのが効率的です。
下地塗料が細かい谷を埋めるので、素地の段階で1000番まで追い込む意味は薄くなります。
素地のまま使う実用品なら、手が触れる面とネジが通る穴の周りだけを仕上げ、裏面は400番で止めてかまいません。
下地の作り方から塗料の選び方までは3Dプリント品の塗装方法で解説しています。
削る量そのものを減らす手も先に考えてください。
底面はプレートの表面がそのまま転写されるので、テクスチャーPEIプレートで出力した面には細かい模様が残ります。
平滑な底面がほしいならSmooth PEIプレートを選び、模様が出てもよい面を下に向けて配置します。
層の高さを下げるか0.2mmノズルに替えれば段差自体が浅くなり、400番で落とす時間が短くなります。
作業場所も決めておきます。
削り粉は細かく広がるため、プリンターのすぐ横で磨くとベルトやレールに粉が入り込みます。
作業机とプリンターを分けられるかという視点は、3Dプリンターの置き場所で解説しています。
よくある質問
積層痕は完全に消せますか
紙やすりだけで完全な平滑面にするのは現実的ではありません。
谷を削り切るには山の頂点まで削る必要があり、寸法も形も変わります。
実際には600番前後まで削ってからサーフェイサーで谷を埋め、乾燥後に均すという組み合わせで、見た目の横じまを消す方法が取られます。
アセトンで溶かす仕上げは家庭でも使えますか
アセトンによる表面の溶かし込みはABSやASAに対して使われる方法で、PLAには働きません。
A1シリーズはABS・ASA・PC・PAが公式に推奨されていないため、そもそも対象外です。
P1Sのような密閉型でABSを扱う場合も、アセトンは引火性の有機溶剤で換気と火気の管理が前提になるので、本記事では手順を扱いません。
ABS系を使うかどうかの判断材料は3Dプリンターにエンクロージャーは必要?で解説しています。
分割して印刷したパーツのつなぎ目はどう消しますか
接着してから、段差をパテかサーフェイサーで埋めて削るのが基本の流れです。
接着剤は樹脂の種類に合うものを選んでください。
セメダインPPXのようなプライマー式の瞬間接着剤はPE・PP・POM・シリコーンゴム・フッ素樹脂といった難接着材料向けの製品で、アクリル系・ポリカーボネート系・ポリスチレン系にはひび割れや溶けの注意書きがあります。
手持ちの造形物に使えるかどうかは、メーカーの適合表を確認してから購入してください。
電動リューターを使えば時間を短縮できますか
サポート痕の荒削りでは短縮できますが、仕上げには向きません。
回転が速いと摩擦熱で樹脂が溶け、平面も波打ちます。
低速に設定して一か所に留めず動かし、仕上げの600番以降は手作業に戻すという使い分けにしてください。
削り粉が勢いよく飛ぶので、防じんマスクと換気は電動工具を使うときほど必要になります。
まとめ
仕上がりを左右するのは道具の価格ではなく、サポート痕を取り切ってから400番で谷を削り、600番、1000番と順に上げるという手順そのものです。
番手を飛ばすと磨き直しになり、押し付けすぎると寸法が狂います。
PLAは摩擦熱に弱く、PETGは水研ぎで毛羽立ちを抑え、TPUは削らずに造形の向きで解決するというように、印刷素材ごとに止めどころも変わります。
塗装まで進むなら600番で手を止めて問題ありません。
ぜひ本記事の番手の進め方と素材別の一覧を参考に、手元の造形物で削る範囲を決めてください。



